以前受任した相続案件ですが、その70代男性の遺産は自宅不動産と農地それに預貯金でした。
相続処理の最初は財産目録の作成ですが、不動産は場所に応じて路線価か倍率表で評価します。預貯金は死亡時の残高を調べ、相続人から葬儀直前に引き出したお金がないか、自分の通帳に移しているお金はないかを尋ねます。
通常の相続はこれでほぼ財産目録を作成できますが、この方はデジタルが得意で、パソコンを何台も所有していました。2台はWindowsで、あと2台はiPadとiPhoneでした。Windowsの方は写真が入っていましたが、メールのやり取りはiPadでやっていたようでした。
この頃はネット銀行を使う方や暗号資産を持っている方も多くなっているようですが、どちらもパソコンの中で完結してしまい、紙媒体の書類が一切残っていないのが、こと相続に関しては問題です。
Windowsの方は難なく開けられたのですが、iPadとiPhoneのパスワードが分かりません。生年月日、住所を始め考えうる組み合わせを試しましたら、iPadには何と「50年後にお試しください」と言われてしまいました。
最後の手段とばかり、プロに開いてくれるよう依頼しましたが「Appleは無理」だと匙を投げられました。図らずもAppleの秘密保持はとても素晴らしいことが分かりましたが、相続処理にはとても困りました。このiPadは、その後相続人が初期化して使っています。
亡くなった方もこんなことになるとは分からなかったのでしょうね。
デジタル資産があったかもしれませんが(秘密も一緒に)永遠に分からなくなってしまいました。こんなことがありますと、AppleをやめてWindowsを使った方がいいのか心配になります。iPadやMacは主にオフに、Windowsは仕事にと両方を使っていますから、Windowsだけにしなさいといわれても困ってしまいますね。
こんな場合に対処するには、せめてパスワードだけでも手帳に残しておくのが良いでしょう。エンディングノートには法的な効力がないのですが、このような大切な記録を書き残しておけば遺族がとても助かります。
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